監 修 山中 岳聽
作・構成 井上 岳宝
映 像 山本 清
ナレーター 大嶋 岳青
伴 奏   琴 :生田流秀玉会会長 賀本 玉起
尺 八:都山流師範 神野 天翠
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    「牛 若 丸
京の五条の橋の上、 大の男の弁慶が
長い薙刀ふりあげて、 牛若めがけて切りかかる

牛若丸は飛びのいて、 持った扇を投げつけて
来い来い来いと欄干の、 上へ上がって手を叩く

前や後ろや右左、 ここと思えば又あちら
燕のような早業に、 鬼の弁慶あやまった。
ナレ:05 大原の里を西に一山越えれば、山深く当時は天狗や妖怪の住む場所として恐れられた鞍馬です。 その洛北奥深い山中で七歳より鞍馬寺に預けられ、兵法の修行に明け暮れた十年。 その腕前は加茂の川原、五条大橋にて太刀千本奪取の悲願に燃ゆる荒法師弁慶をさえ、翻弄し打ち負かす程にななっていました。

ナレ:06 雪ふりしきる中、清盛の追っ手を逃れ都落ちする母、常盤の懐で寒さに泣いた牛若。
その義経が、一の谷、鵯越の逆落としと、武勲をたて、勇名を轟かし、平家滅亡の第一人者に育て育まれるとは あの清盛でさえ想像は出来なかったことでしょう。
  よ し の や ま」 静 御 前

よしのやま 峯の白雪 ふみわけて

      入りにし人の あとぞ恋しき

よしのやま 峯の白雪 ふみわけて

      入りにし人の あとぞ恋しき
常盤抱孤図」 梁川 星巌

雪は笠檐に灑いで風袂を捲く

呱呱乳を覓むる若為の情ぞ

他年鐵枴峯頭の險

三軍を叱咤するは是れ此の聲

ナレ:07 治承四年 (1180) 栄華を極める清盛は突然、京の都を捨てて安徳天皇を伴い福原に遷都する。
湊川神社から新開地にかけてが、都跡といわれていますが、生田神社の裏側に生田の森が名残を留め、空を覆う巨木は源平合戦をきっと見届けたことでしょう。
  「宿 生 田
        菅 茶山
千歳の恩讐両ながら存せず
風雲長なえに為に忠魂を弔う
客窗一夜松籟を聴く
月は黒し楠公墓畔の村  

ナレ:08 寿永三年 (1184) 木曽義仲軍を宇治瀬田で破った義経・範頼は平家軍が布陣する福原に攻め入る。生田の森の合戦です。
源氏の勇将、梶原源太景時が子 景季は箙に梅の一枝を差し挟み奮戦、梅の香を漂わせながら戦った風流な若者が偲ばれます。
  「梅 花
        本宮 三香
五弁花開いて万朶香し
名卿の遺愛紋章を見る
籬に老木を裁えて流謫を慰め
箙に一枝を挿んで戦場に魁く

  「青葉の笛
一の谷の軍破れ
討たれし平家の 公達あわれ
暁寒き須磨の嵐に
聞こえしはこれか 青葉の笛

更くる夜半に門を敲き
わが師に託せし言の葉あわれ
今わの際まで持ちし箙に
残れるは
「花や 今宵」 の歌
ナレ:09 壮絶な一の谷の合戦では多くの平家の武将が討ち死にしましたが、中でも涙を誘うのは熊谷直実に討ち取られた紅顔の美少年 敦盛の最期です。
笛の名手は陣営で笛を奏で、戦場ではその笛を腰にさし挟み戦う。その優雅な心の持ち主に直実は涙を流し、首をはね、戦いの虚しさに落胆しました。
敦盛の首塚がある須磨寺を尋ねました。
  「青葉の笛
        松口 月城
一の谷の軍営遂に支えず
平家の末路転悲しむに堪えたり
戦雲収まる処残月あり
塞下笛は哀し吹くく者は誰ぞ

ナレ:10 須磨寺の西、鉄拐山頂に佇み、鵯越の逆落としに思いを馳せ瞼を閉じれば失意の中、赤旗をたなびかせ、瀬戸内の海を敗走する平家の船団が浮かんできます。
鉄拐峰に登る」 梁田 蛻巌

古塁烏啼いて人を見ず

嶺雲澗水共に春を傷ましむ

憐む可し夜半風前の笛

梅花を吹き落として戦塵と作す

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