『 車 塵 集 』
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かろき翅のおしろいや

黄にこそにほへ新ごろも

みやびは誰か及ぶべき

花を臥戸にふたり寝るとは
薄翅凝香粉

新衣染媚黄

風流誰得以

兩兩宿花房
   (賈 蓬 莱)


岩にせかるる川浪や

人に別るるわが歎 長々しくも

徒に堤のやなぎ糸たれて

去りゆく舟を得つなぎもせず
一片潮聲下右頭

江亭送客使人愁

可憐垂柳糸千尺

不爲春江綰去舟
     (趙 今 燕)

はまべにひとり白鷺の

あだに打つ羽音もすずし

高ゆく風をまてるらむ

こころ雲ゐにあこがれて
沙頭一水禽

鼓翼揚清音

只待高風便

非無雲漢心
   (張 文 姫)


われは北斗のほしにして

千年ゆるがぬものなるを

君がこころの天つ日や

あしたはひがし暮は西
儂作北斗星

千年無轉移

歡行白日心

朝東暮還西
     (子 夜)

別れしは作、花さく日

今秦淮の水は秋

朝うたてきかがみには

わが面かげぞいたましき
憶昨花前別

秦淮水又秋

朝來怯臨鏡

孤影空自愁
   (趙 今 燕)


うたてしや秦淮の水

おぞましや江に浮ぶ船

わが夫をのせて去りにしより

流れけむ 年を幾年
不喜秦淮水

生憎江上船

載兒夫婿去

經歳又經年
     (劉 釆 春)

醉ひざめの月のさやけさよ

君おも照らすものからに

君がすがたは見えもせで

ただわりなさの天つ雲見ゆ
醉罷月己明

照我還照君

如何君不見

只見天邊雲
   (周 文)


わかきなやみに得も堪えで

わがなかなかに頼むかな

今はた秋もふけまさる

夜ごとの閨に白みゆく髪
自嘆多情是足愁

況當風月滿庭秋

洞房偏與更聲近

夜夜燈前欲白頭
     (魚 玄 機)