楊貴妃は覇水を見た (六)
女冠となった玉環は、太真 (タイシン) という名を与えられた。そして女道士のsyがたのまま驪山 (リザン) の華清 (カセイ) 宮まで、皇帝に扈従した。 ある日、彼女に温泉に入れという、皇帝の命令が伝えられた。宮廷のしきたりでは、その夜の寵愛を受ける宮女に、そのような命令が下るのである。玉環はむろんその意味を知っていた。
『胡蝶の陣』 著:陳舜臣 毎日新聞社発行 ヨリ