~ ~ 『 寅 の 読 書 室 Part Ⅶ-Ⅸ』 ~ ~

 
== 『日 本 国 紀 (下)』 ==

著 者:百 田 尚 樹
発 行 所:幻 冬 舎 文 庫
 
 
 
 
 
膨張する中華人民共和国
ソ連崩壊の後、唯一残る共産主義大国である中華人民共和国は、一九七〇年から牙を剝き始めました。
昭和四十八年(1973)、ベトナムからアメリカ軍が撤退するやいなや、中国はベトナムのパラセル諸島(中国名:西者諸島)を占領し、昭和六十三年(1988)にはスプラトリー諸島(日本名:新南群島)でもベトナムと戦闘し、いくつもの岩礁を手に入れています。ちなみにスプラトリー諸島は、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが領有を主張しています。また平成四年(1992)フィリピンからアメリカ軍が撤退すると、その二年後に、中国はフィリピンのミスチーフ環礁を占領しました。そして南シナ海はすべて自国得領と宣言しています。地図を見ればわかりますが、中華人民共和国は南シナ海にはごくわずかしか接していません。
国内的にはチベット人やウィグル人、内モンゴルの人々を弾圧し、抵抗する人々を粛清し、今も多くの人を収容所に送り込んでいます。
中華人民共和国は成立直後から、国民に対して苛烈な政策を行なってきました。朝鮮戦争に自国民を派兵して百万人の戦死者を出し、昭和三十二年(1957)の反右派闘争では、「右派」と見做された五十五万人を、労働改造のため辺境に送り、その多くを死亡させました。翌年の昭和三十三年(1958)から昭和三十六年(1961)まで行なわれた「大躍進運動」では、政策の過ちから、推計三千万~四千万人の餓死者を出したと言われています。さらに凄惨だったのは、昭和四十一年(1966)から毛沢東が死去する昭和五十一年(1976)まで十年続いた文化大革命です。「造反有理」の掛け声とともに、各地で大量の殺戮や内乱が起き、一千万人(研究者によっては四千万人とも)の死者を出し、一億人が何らかの被害に遭いました。また平成二十八年(2016)以降、前述のチベット人やウィグル人、モンゴル人への弾圧(虐殺も含む)が烈しさを増し、アメリカ政府が中国当局によるウィグル人への弾圧を「ジェノサイド」と認定するなど、大きな国際問題となっています。
余談ですが、文化大革命については当初、日本の新聞社もこぞって礼賛記事を書いていました。しかし、やがてその恐るべき実態を知り、批判記事を掲載し始めるようになります。中国共産党に批判的な報道をした新聞社・通信社は次々に北京から追放されましたが、最後まで文化大革命の実態を報じず、処分を免れたのが朝日新聞社でした。
そんな中国でも、一九八〇年代には若者を中心とした大規模な民主化運動が起きました。平成元年(1989)六月、自由や民主化を求めて活動していた大学生が、自分たちの主張を訴えよと北京の天安門広場に集まっていました。日に日に膨れ上がる学生たちに対し、政府はついに人民解放軍を出動させ、発砲した上、戦車で轢き殺したのです。「六四天安門事件」と呼ばれるこの事件での犠牲者の総数は今でも不明ですが、平成二十九年(2017)に公表されたイギリスの公文書には、少なくとも一万人が殺害されたと記されています(数万人にもなるという説もある)。はっきろしていることは、中華人民共和国には言論の自由はもちろん、政治的自由は一切ないということです。今でも、インターネットさえも検閲されています。
日本は日中国交正常化以降、中華人民共和国に対して、ODA(政府開発援助)など莫大な資金・経済援助をしてきましたが、彼の国はそれに感謝を表明するどころか、国内において強烈な反日教育を推し進めて来ました。また「南京大虐殺」という嘘を世界に広め、日本を貶め続けて来たのです。平成三十年(2018)、日本政府は四十年続けて来た対中ODAをようやく終了させました。
昭和四十四~四十五年(1969~1970)に国連が行った海洋調査で、尖閣諸島近辺の海底に石油資源があると発表されると、中国は突然、尖閣列島の領有権を主張し始めました。平成二十二年(2010)以降は連日、海警局の船を尖閣諸島周辺に差し向け、着々と実効支配に向けて動きだし、平成二十九年(2017)以降は水上艦艇だけでなく、潜水艦、さらに病院船なども領海に侵入させるようになりました。いずれこの海域で日本と中華人民共和国との間で戦闘が起きることが予想されます。中華人民共和国は軍事費の膨張も凄まじく、四半世紀で約四十倍にまで膨れ上がっています。日本が対中ODAを終了させた平成三十年(2018)の軍事費は約十八兆四千億円となっていましたが、これは日本の防衛費の三倍以上でした。
これに対し日本政府は、同盟国アメリカとの関係を緊密にするため、「集団的自衛権」の行使容認などを含む「平和安全法制」の整備を急ぎました。しかし、これに左派野党やマスメディア、左翼系知識人や文化人らが一斉に反対の声を上げます。彼らは、軍事機密などの漏洩を防ぐための「特定機密保護法」の制定にも大反対のキャンペーンを展開しました。この一連の動きは日本の安全を損なうための活動に他なりませんでした。
これらの法案に反対を叫んだ者たちは、GHQの「WGIP」の洗脳を受けた者たちの後継者であり、広い意味での「戦後利得者」ともいえます。加えて、戦後のマスメディアと教育界に蔓延した共産主義思想を受け継いだ者たちでもありました。彼らは戦前の日本をすべて否定することが絶対正義と思い込み、今、現実的に「日本を守る」「自らを守る」ための策を講じることさえ「よくないこと」と見做しています。
その論理は単純で、「平和安全法制」や「特定機密保護法」が成立すれば、日本が戦前のような軍国主義になり、やがて侵略戦争に向かう、あるいはアメリカの侵略戦争に加わることになる、というものです。これは半世紀以上前の「六十年安保改定」に反対した社会党や朝日新聞などの主張と酷似sています。その時彼らに煽られたデモ隊が国会を取り囲んだと同じく、「平和安全法制」の時も、大勢のデモ隊が国会を取り囲みました。滑稽なのはデモ隊の中に野党の国会議員もいたことです。国会議員の仕事は国会の審議であってデモ隊に加わって反対運動をすることではありません。目の前に迫る危機に対してどう対処すべきかということが何よりも優先されりべきなのです。
中華人民共和国の軍事的膨張が東アジアの秩序を乱していることは確実で、このままいけばどこかで軍事衝突が起きる可能性は極めて高いと言わざるを得ません。ところが日本ではなぜかそのことを訴えるメディアはごく少数であり、国民に最も大きな影響力を持つテレビのキー局(NHKを含む)はどこも中国の脅威を報道しません。
今やテレビ局を含むメディアは「第四の権力」といえるほど巨大に膨れ上がり、多くの国民の思想や考え方を操作出来るまでになっています。ここに来て、「クロスオーナーシップ「の弊害が深刻なものとなっています。
2026/03/08
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