~ ~ 『 寅 の 読 書 室 Part Ⅶ-Ⅸ』 ~ ~

 
== 『日 本 国 紀 (下)』 ==

著 者:百 田 尚 樹
発 行 所:幻 冬 舎 文 庫
 
 
 
 
 
第十章 世界に打って出る日本
明治政府が近代化を急ぎ、富国強兵を目指したのは、そうしなければ西洋の列強に国が呑み込まれてしまう危険があったからです。
当時の世界は二十一世紀の今日とはまるで違っていました。十九世紀の後半は、百年以上続いた西洋諸国によるアジア植民地争奪戦の最終段階を迎えた時期でした。加えて列強同士の権益争いが始まろうとしていたのです。
日本はその中で独立を保ったばかりか、凄まじい勢いで欧米列強を追いかけていきます。それはまさに「世界史の奇跡」ともいえる出来事でした。しかし、脅威は去ったわけではありませんでした。「遅れてきた列強」ロシアが、アジアで南下政策をとり、満洲から朝鮮半島に触手を伸ばしてきたからです。もしロシアがその一帯を押さえれば、日本の安全は著しく脅かされることになります。
「日清戦争」と「日露戦争」という明治の二つの戦争は、まさに日本の安全確保、自衛のために行なわれた戦争に他なりませんでした。
しかし「日清戦争」の勝利によって、清から多額の賠償根を得たことで、国民の間に「戦争は金になる」という誤った認識が広がったことも確かです。その誤解と驕りが、「日露戦争」以後の日本を誤った方へと進ませていくことになります。
2025/12/07
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