~ ~ 『 寅 の 読 書 室 Part Ⅶ-Ⅸ』 ~ ~

 
== 『日 本 国 紀 (下)』 ==

著 者:百 田 尚 樹
発 行 所:幻 冬 舎 文 庫
 
 
 
 
 
第九章 明治の夜明け
ひとくちに「明治維新」といっても、その定義はなかなか難しいものがあります。
討幕運動から王政復古、そして明治になってから行なわれた政治改革や社会改革までを含んでいるからです。従ってその時期の特定も難しいのですが、一般的には、慶応三年(1867)の「大政奉還」から始まり、明治十年(1877)の西南戦争の終結までの約十年間と言われています(異論もあります)
黒船来航から大政奉還までの十四年間はとてつもない激動の時代といえますが、本当の意味の激動は、大政奉還後の十年間でした。日本史上において、かくも短い期間で劇的に国全体に変革が起きたことは、これ以前にも以後にもありません。江戸末期の日本と明治の初期の日本を見ると、とても同じ国とは思えないほどです。それぐらい政治も社会も人々の生活様式も何もかもがまるで違っています。
しかし裏を返せば、この激変は、江戸時代に、あまりにも社会や制度が変化しなかった反動であったとも言えるかも知れません。変革を求める国民(民衆)のエネルギーが、前例なきものを認めない幕藩体制ばくはんたいせいによって抑え込まれていたところへ、黒船が来航し、その思い蓋にヒビが入りました。そして、その裂け目から蒸気が一気に噴き出すようにして、思い蓋を吹き飛ばしたのです。
2025/11/26
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