その翌日、広瀬の部屋で二人はまた逢った。
アリアズナは世にも面映ゆげであった。
昨夜の思い出が生々しい。
彼女はまだ男の熱い呼吸を唇の上に感じていた。生まれて初めて男に与え、男から受けた接吻であった。
街路を歩いても、昨日と違う。
道行く人の視線が、矢のように鋭く自分に向けられていると感じられた。
「タケオさんに見ていただきたきことがります。お話できないから手紙に書きました。夜通し書きました。昨日の夜は眠れなかったのよ。さっきポストに入れておきましたから、明日読んでくださいね。」
とささやきながら、アリアズナは千万無量の思いをこめて、広瀬をみつめた。
画ハガキの女と全く同じ眼つきであった。
彼女はビロード張りの清楚な手帖を取り出して、ここにあなたの記念を下さいと頼む。即座に、彼女の目には絵のように映る不思議な固い文字を五つづつ、几帳面な字体で、広瀬は手帖の中に並べた。
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