(通 釈) 高く突き出た奇峰は、その頂上を雲の上に浮かべているようである。 頂上に立って見れば、天風が吹き上がって、絶頂の秋は、まことに美しい景色である。 目を転じて南のほうを見れば、関東の山河が、草鞋の下にありありと展開されている。思わず、壮大な気分になって、大声で呼ばわろうとしたが、関八州がびっくりするのではないかと心配になった。
○絶頂==頂上のこと。 ○突兀== 「突」 は突出すること、 「兀」 は山の高いこと。挺でて高いことをいう。 ○雲外浮==頂上が雲の上に浮かんでいるように見える。 ○天風==天上の風。 ○絶巓秋== 「絶巓」 は絶頂というに等しく、天風が絶頂にまで吹き上がる秋景色、という意。言外に山頂の秋の景色の絶景なることを示している。 ○歴歴==一つ一つ明らかなこと。 ○双鞋== 「鞋」 とは草鞋のこと。 「雙鞋」 は一足の草鞋の意。 ○但==ひたすら。 ○八州==「関八州」 のこと。