しょう しん ろく だい
高杉 晋作
1839 〜 1867


内憂ないゆう 外患がいかん しゅうせま

まさ存亡そんぼう きゅうとき

ただ ほう くんため こくため

しょう しん さい こつ また なんうれ えん
内憂外患迫吾州

正是存亡危急秋

唯爲邦君爲家國

焦心碎骨又何愁

(通 釈)
内憂外患が、次から次へとわが国に迫っている。いまこそ、国家の危うい大切な時である。
その時の当って、藩主の為、国家の為に一身を顧みずに尽くすだけだ。ほかに何を悩むことがあろう。

○内憂外患==内の愁いと外からの患い。
この詩では、国内の世論の統一を見ずに、いたずらに混迷の度を強めることと、諸外国の軍艦による脅迫とである。
○吾州==吾国というに同じであるが、当時 「国」 といえば、概ね 「藩」 あるいは 「郡国」 をさすのである。
○存亡危急==「危急存亡」 というのが一般的である。一国の存亡の分かれ目、という意味である。
○秋==季節の秋を意味しない。このような場合に限って 「とき」 と訓じている。
○邦君==藩主をさす。    ○家国==国家と同じ。
○焦心==気をもみ、焦慮すること。
○砕骨==身を粉にして働くこと。粉骨砕身と同じ。
○愁==気にかける。心を悩ます。


(解 説)
幕府が政権に固執し、尊皇攘夷派の中にうちわもめや分裂生じて国内は混乱し、外国からは軍艦でもって威嚇されるなど、内憂外患が噴出し、まさに危急存亡の時に当って、志のある者は身分を問わず、心を一にして事に対処すべきである、と、若い藩士たちに、 「焦心録」 を書いて激励した。この詩は、その後に作られたもの。
(鑑 賞)
ひたすら救国を思う情熱の迸り出た詩である。ことばは練れていないが、読む者は、その気迫の激しさに打たれる。