ひん こう しゅ
佐藤 一斎
1772 〜 1859


つきばい うてこう しゅ

うめ月影げつえいむか えて ひん

ひん こう しゅ ふたつ ながら双絶そうぜつ

かん りょう黄昏こうこん いつ こくはる
月訪梅花爲好主

梅邀月影作佳賓

佳賓好主兩雙絶

菅領黄昏一刻春

(通 釈)
月は、満開の梅花を訪ねてきて、好い主人であるとし、梅の方では、月を迎えては、よい賓客であるとしている。
明るく照らし出す月影、芳香を漂わせる梅の花、この賓客と主人とは、好一対のすぐれた風景である。
かくしてこの月と梅花は、春の黄昏時の一刻を、わがものとしているのである。

○月影==月の光。
○双絶==二つのすぐれたもの。ここでは好一対のすぐれた風景。二つの絶景。
○菅領==支配する。自分のものとすること。
○黄昏==たそがれ。夕方の薄暗い時刻。


(解 説)
春の夕の梅と月を詠ったもの。「佳賓好主」 は「佳い賓客、好い主」 の意。