けつ こん しき
安達 漢城
1864 〜 1948


偕老かいろう ちかい ってしゅく しょうささ

いち もん琴瑟きんしつ ひゃく かんば

せん しょう かん してかみ いま すがごと

ともいのりゅう りゅう うんさか んなるを
偕老盟成捧祝觴

一門琴瑟百花芳

祖先照鑑如~在

倶祷隆隆家運昌

(通 釈)
夫婦の契りを結んだ二人の門出を祝って、祝盃をあげる。
結婚は独り両人のことのみならず、これを契機として両家睦じくなるべきもの、そのめでたさは百花咲き誇って芳しいばかりである。
両家の祖先も喜んでご覧になっておられるだろう。あたかも、この場に舞い下りて、二人を見守り祝っているようである。
そして、皆と共に新家庭の繁栄を祈っている。実に素晴らしいことである。

○偕老==偕に老ゆ。夫婦相和し、情愛こまやかなるさま。
夫婦の契りがきわめてこまやかで、生きて偕に老いること。
○盟==夫婦の契り。
○祝觴==祝いの杯。 「觴」 は杯。
○一門琴瑟==新郎新婦を仲立ちにして、両家一門の仲がよくなること。「瑟」 は大琴。「琴」 と 「瑟」 は合奏する時、その音がよく調和する。転じて、夫婦和合することをいう。
○百花==いろいろな花。多くの香りよき花。百芳ともいう。
多くの香りよき花が芳しく咲いていると、結婚のめでたさをたとえたもの。
○照鑑==照覧に同じ。神仏が明らかにみそなわす (ご覧になる) こと。
新郎新婦それぞれの祖先も、若い二人の結婚を祝っていること。
○隆々==勢いの盛んな様子。
○昌==盛ん。「盛」 に同じ。


(解 説)
題名どおり、結婚式を祝った詩。中国でも、日本でも、結婚を祝うそれほど多くない。この詩は作者自信の発案か、依頼されての作かは明らかでないが、心から結婚を祝う気持ちを述べている。
字句の解釈よりも、その意図を汲んで吟ずるべきであろう。
(鑑 賞)
『詩経』 のめでたい句を引き、結婚を慶賀する詩のお手本を作ったもの。
詩としては面白みがあるわけでないが、誰にでも使えるようになっているので、結婚式に吟ずるのに恰好の詩である。
神が、そこにいて見守っている、とはいかにも日本の神前結婚らしい情景である。