(通 釈)
敵が水陸同時に三千の兵を進めて来た。今日こそ、いよいよ敵味方は勝負を決する時である。
丘に登って四方を見渡せば、敵は凄まじい勢いで肉迫して来る。
弾丸は雨あられのように飛来し、音を立ててわが軍服の袖に当った。
○輸贏==雌雄、勝敗。
○方==ちょうど今。
○飛丸==飛来する弾丸
○戞==硬いものが触れ合う音の形容。
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(解 説)
慶応四年、伝習隊五百人を率いて江戸を脱出した大鳥は、途中、反官軍勢力を吸収しつつ東北に向かったが、会津若松城の陥落によって、軍艦八隻を奪って脱走した幕府海軍副総裁榎本武揚と合流して函館に移り、五稜郭に拠った。
官軍は海と陸から攻撃し、激戦の末、明治二年五月十八日、攻略した。
榎本、大鳥らは、黒田清隆に降伏して、戊辰戦争は終ったのである。
この詩は、当時の激戦の様子を描いたものである。
(鑑 賞)
敵弾の飛来する丘の上に身をさらして督戦する大鳥の姿は、いかにも勇壮で、血気に任せて恐れることを知らぬ青年指揮官の、高揚した精神がよく描かれている。
結句は、実践を経験した者でなければ描き得ない写実の迫力がある。
戦場を詠う詩の新境地を開いたものといえよう。 |