ざん
安達 漢城
1864 〜 1948


たる がく せん しゅうひい

山勢さんせい てんつら なってきゅう しゅうあつ

孔底こうてい 幽玄ゆうげん れい

きゅう ばん しん しゅうまも
巍峨蘇嶽秀千秋

山勢連天壓九州

孔底幽玄有靈火

無窮萬古護~洲

(通 釈)
高く聳え立つ阿蘇山は、千年もの間、この地に抜き出て際立ってある。
雄大な外輪山の姿は、あたかも九州を圧するかのように思われる。
噴火口の底深くには霊妙な火が秘められており、永遠に、わが国を護るのである。

○巍峨==山が高く聳え立つさま。
○蘇岳==阿蘇山のこと。
○千秋==千年、転じて永い年月をいう。
○秀==ぬきん出る。
○山勢==阿蘇の雄大に連なっている様子。
○孔底==噴火口の底。
○霊火==火口深いところにある霊妙な火。 要するに溶岩のことだが、作者の阿蘇山に対する畏敬の念から用いたのであろう。
○無窮万古==古い昔から遠い将来に渡るまでいつまでも。


(解 説)
作者の故郷熊本の誇る大自然阿蘇山の雄大さを詠じた詩。

(鑑 賞)
作者が幼少の頃よく眺めたであろう故郷の阿蘇山。阿蘇に寄せる作者の畏敬と限りない愛着とが素直に伝わってくる。
起・承句は乃木将軍の 「富嶽」 によく似た表現である。影響を受けたものと思われる。
この詩も転句がポイントだ。阿蘇の特色はなんと言ってもいつ噴火するかわからない溶岩の不気味さにある。そこに着目して、これを神州を護る霊火としたのは、機知の妙といえよう。
お国自慢の詩だが、てらいもなく堂々として嫌味がない。