(通 釈) 豊臣秀吉の朝鮮征伐の時、大海を乗り切ってかの地に押し寄せた軍船は大国の明をも震え恐れさせた。 その秀吉の居城も、さして年月を経ていない今日、荒れるに任せ、雑木のみ生い茂るに至ろうとは、誰が予想することが出来たであろうか。 この付近の山々には、風雨がすさまじい唸りを上げて荒れ狂うことがあるが、それはさながら秀吉が大音声を上げて千軍万馬を叱咤しているかのように聞こえるのである。
○寄題==その地に行かないで題詠すること。 ○豊公旧宅==豊臣秀吉のもとの住まい。 ○絶海==絶はわたる。海をまっすぐに横切って渡る。 ○楼船==船の上に櫓を設けた船。幾階にもつくられた大きな船。 ○大明==大唐・大元・大清などの用法と同じく国号に大の尊称をつけたもの。中国人の呼称をそのまま用いたもので、これを尊んでいったのではない。 ○柴荊==しばやいばらの雑木。 ○時時悪==時折荒れる。 ○当年==その昔。その当時。 ○叱咤==烈しく号令すること。