(通 釈) 錦の御旗を先頭に、討幕の官軍が堂々と進軍して関東を威圧している。 この危機にあたって、江戸百万の庶民の生死は西郷、勝 の談笑の中にかかっている。 物事を見きわめることのない群小どもには、二人の画く大計など知るはずもないが、両者相対する姿は、永遠に伝えられるであろう。
○錦旆==錦の御旗 ○圧関東=薩長主体の討幕の軍勢が西から上って来て関東を威圧すること。 ○談笑==西郷と勝との対談。 「笑」 の字を用いたのは、二人の大人物であることを示している。百万人の生死を左右する一大事を目の前に控えても、泰然としてお互いの立場を尊重し合い、決して血気にはやったりしない。 ○群小==物事を見きわめることの出来ない多くの小者。 ○天下計==天下の趨勢として、赴くところへ赴かしめる西郷と勝との考える大計。 ○千秋==千年。永い年月。