だんさくら
本宮 三香
1877 〜 1954


せい 烈々れつれつ 乾坤けんこんつらぬ
ちゅう ゆうほまれたか靖国やすくに もん
はな だん ちてはる うみごと
香雲こううん ふかところ 英魂えいこんまつ
至誠烈烈貫乾坤

忠勇譽高靖國門

花滿九段春若海

香雲深處祭英魂

(通 釈)
国の為に戦い死んでいった若者達の誠の心は烈々として、この天地の間を貫くほどのものがあった。 その忠義武勇の誉れは、靖国神社の大鳥居のように高く尊い。
春を迎えた靖国の社には、今年も桜の花が咲き乱れ風に揺れて、あたかも海のように見える。
かくも群がり咲く桜の中に英霊は祀られ、安らかに眠っているのである。

○至誠==最上の誠。 ○烈烈==激しく、盛んなさま。
○乾坤==天地。
○春若海==桜の花が至るところに咲き乱れて風に揺れ、あたり一面波打って見え、あたかも、この春爛漫の養子は海のようである。
○香雲==群がり咲く桜に花の様子。


(解 説)
九段の桜に寄せて靖国神社の英霊を弔い、その武勇をたたえたもの。
忠義を尽くして国の為に死んでいった多くの武人の生前の勇気をたたえ、英霊の安らけくあることを祈る鎮魂に詩として知られる。

(鑑 賞)
靖国神社に祀られた英霊を詠じた詩である。作者は日露戦争に従軍し、戦友と共に戦い、また、第二次世界大戦時にも国の為に死んでいった若者達の姿をまのあたりにしている。
いきなり 「至誠烈々乾坤を貫く」 という強い起句を詠い得たのも、そのためである。この詩の最初のポイントは、若者達の国に尽くす至誠をたたえた、この起句に有る。
これに対応するもう一つのポイントは、むろん、その至誠をたたえるように咲く桜の花である。桜は日本の国花、日本の国の為に散っていった人たちを日本の国花が咲く社にまつる意義を、作者は詠いあげてもいるといっていい。