栄(えい) 枯(こ) 盛衰(せいすい) は一(いち) 場(じょう) の夢(ゆめ) 相(そう) 思(し) 恩(おん) 讐(しゅう) 悉(ことごと) く塵煙(じんえん) となる 星(ほし) 移(うつ) り物(もの) 換(かわ) るは刹(せつ) 那(な) の事(こと) 歳月(さいげつ) 怱怱(そうそう) 逝(ゆ) いて還(かえ) らず 史(し) 編(へん) 読(よ) み続(つづ) く興亡(こうぼう) の跡(あと) 弔(ちょう) 涙(るい) 幾回(いくかい) か几(き) 前(ぜん) に灑(そそ) ぐ 今(こん) 夜(や) 荒(こう) 城(じょう) 月(げつ) 夜(や) の曲(きょく) 哀(あい) 愁(しゅう) 切切(せつせつ) 當年(とうねん) を憶(おも) う
栄枯盛衰一場夢 相思恩讐悉塵煙 星移物換刹那事 歳月怱怱逝不還 史編讀續興亡跡 弔涙幾回灑几前 今夜荒城月夜曲 哀愁切切憶當年
(通 釈) この世の栄枯盛衰は、その場かぎりの、わずかな間の夢に過ぎない。 時がたてば、お互いの喜びの感情も、またうらみの情も、ことごとく雲か霞のように消えてしまう。 星が移り、物事が変化していくのも、ほんの少しの間のことである。歳月はどんどん過ぎ去って帰って来ないのである。 そうした無情の世の移り変わりを考えながら、栄枯盛衰の歴史のあとを振り返るとき、その儚さが胸にしみ、自然と涙が出て来る。 月の光の中で、 「春高楼の花の宴、めぐる盃影さして・・・・・」 と、あの荒城の曲を聞いていると、栄枯盛衰のあとがしのばれて、哀愁切々と胸を打たれる。