(通 釈) もし義士たちの主君の仇をかえすという義挙がなければ、臣下の主君に対する誠はとって立てることが出来ようか。 だが、しかし、もしいつもこのような事件があったら、ついには国法は無いに等しくなり、国の秩序は乱れる。 国法は廃絶することは出来ない、さりとて、臣節は途絶えるものではない。果てしなく広がる天地の果てまで、昔から今に至る永い時間の流れの中で、赤穂義士の義挙だけは許されよう。
○臣節==臣下の主君に対する貞節の心。忠義。 ○何由立==これにかわる何物によって臣節を立てることが出来るかの意。 ○王法==国王が出す命令。国家の法秩序。 ○不可廃==廃止することが出来ない。 ○不可已==やむことが出来ない廃されない。 ○独許==王法を曲げてまで臣節をつくした仇討ちはただこれ一つだけは許されようという意味が込められている。