黄色い雲がたなびく夕暮れの城辺のねぐらに、烏が帰って来て鳴いている。樹上で物寂しく鳴く声は、雌雄離れて悲しんでいるのであろうか。
機にかけて錦を織っているのは、夫に 「廻文錦字詩」 を織って送った秦川の女のように、遠く離れている夫を思う女であろう。
碧色の薄物の窓掛けは、夕方の烟のように見えるが、その窓越しに話す声が聞こえている。そして時折梭の手を止めて、嘆かわしげに、遠征中の夫の姿を思い浮かべて考え込んでいる様子である。
やがて夜になって、ただ一人で、夫の居ない部屋に寝るとき、寂しさ悲しさに、涙は雨の如く流れることであろう。
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