秋の夜、独り庭に下りてそぞろ歩きを楽しめば、折から月が冴えて気自ら清涼である、 この静かな境地ひたっているものは、はたして何処に居るだろうか。
月に向かって詩を高らかに吟ずれば、歌声は清風に乗って遠く流れ、幽玄な心境となって、のどかな春の水の如くである。
幾千もの聖人があらわれても所詮は自分の心に悟りの秘訣はなく、また儒学の基本たる六経も結局は我が胸中の塵を払うものでしかない。
いたずらにあの周公たらんと夢見ても、それは当世には通用しないことを悟って、それよりもむしろ、あの孔子の弟子の顔回のように貧困の中でもそれに甘んじて、そのうち靜に吾道を楽しむのには及ばないのだ。
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