しゅう じつ おとうとおも
謝 榛
明 (1495 〜 1575)

 

しょう がい なんじみずかしょう するをあわ れむ
じょ こころおどろ かすなお どう なるに
べつ 幾年いくねん じょ だい
ぼう ちゅう せん 弟兄ていけい なり
しゅう てん 落木らくぼく うれい しょう
残燈ざんとう ゆめ りや しや
はる かに えんおも いて涕涙ているいふる
いわ んや寒雁かんがんこう くだ るを くをや
生涯憐汝自樵蘇

時序驚心尚道途

別後幾年兒女大

望中千里弟兄孤

秋天落木愁多少

夜雨残燈夢有無

遥想故園揮涕涙

況聞寒雁下江湖

一生農家の仕事をする君を気の毒に思うが、またそれにしても、季節が巡るごとに、今なお自分が旅の途中にいることを知り、驚かずにはいられない。
別れてからはや数年になるが、きっと君の子供達も大きくなっていることであろう。
遠く千里の彼方にまで目をやっても、兄弟は君と私の二人だけだ。
秋の空の木の葉が無数に舞い散っているが、それを見るにつけても、私の憂いは深まるばかりだ。
あるは雨の降る夜、その雨の音を聞きながら、消え残った灯火を見ても、その夜の夢に故郷が現れるのだ。遠く故郷を想うだけでも涙があふれてならないのに、まして秋の空を、雁が川やみずうみを渡って来たと聞けば、なおさらのこと、望郷の悲しみはつのるばかりなのだ。