さん えん しょう ばい
林 逋
宋 (967 〜 1028)

 

しゅう ほう 搖落ようらく してひと喧?けんけん
ふう じょう してしょう えん こう
えい 横斜おうしゃ みず 清浅せいせん
暗香あんこう どう つき 黄昏こうこん
霜禽そうきん りんとほつ してまなこぬす
ふん ちょう らばまさたましい つべし
さいわい ぎんあい
もち いず壇板だんばん金尊きんそん
衆芳搖落獨喧?

占盡風情向小園

疎影横斜水清浅

暗香浮動月黄昏

霜禽欲下先偸眼

粉蝶如知合斷魂

幸有微吟可相狎

不須壇板與金尊

すべての花が散り落ちた冬景色の中で、ひとり梅だけが美しく咲きほころびて、ここ山中の小園の風情を独り占めにしている。
その枝は或は横に或は斜めに清らかな水に影をうつし、また、ほのかな香りを漂わす月の光の淡いたそがれ時である。
霜のおりる頃、鳥は地上におりようとして先ずあたりをうかがうかのように見まわす。
花のまわりに舞っている白い蝶は、もしこのことを知ったならば、気の遠くなる程驚くことであろう。
この清楚で気品の漂う梅を眺めながら、詩を作り微吟していると、楽器や酒樽を前にするような必要もなく、誠によい気分である。