賀知章が酒に酔って馬に乗る姿は、まるで船に揺られているようである。酔眼はもうろうとしていて、路傍の井戸に落ちてもそのまま気付かずに眠ってしまう程である。
汝陽王の?(シン) は毎朝三斗の酒を飲んでから出仕をする。それなのに途中で酒麹を運ぶ車に出会えば、また飲みたくて口から涎を流すほどで、金泉の出る酒泉郡に領地換えしてもらえないことを残念に思っている。
左丞相の李適之は一日の酒宴に万銭もの大金を使い、その飲み方は大きな鯨が百もの川の水を一気に吸うかと思われるほどで、杯を手にして常に自分は酒好きだが、どぶろくは嫌いだといっている。
崔宗之は姿美しい美少年のようである。杯を手にしては冷ややかな白眼で青空をにらみつけ、その姿は美しい木が風前に臨んで立っているようだ。
蘇晉は深く仏教に帰依していて、長い間、仏像の前で精進潔斎をするが、酒に酔うと往々にして座禅の場を逃げ出している。
李白は酔う程に詩興が湧き、一斗の酒を飲む間に百篇の詩を作るというが、往々にして長安市内の居酒屋で酔いつぶれて寝込んでいることが多い、こんな時舟遊び中の玄宗皇帝からお召しがあっても、船に乗ることが出来ず、皇帝に向かって、「自分は酒飲みの仙人です、失礼は平にお許しを」
などと平気で言った。
草書の名手で草聖と呼ばれた張旭は、三杯の酒を飲むと、ほろ酔いきげんで見事な草書体の書を書き、また王公の前でも礼儀など一向におかまいなく、帽子を脱ぎ、頭をむき出しにして、髪の毛に墨を含ませて紙上に落とせば、その筆勢は雲煙の飛ぶようにすばらしい。
焦遂は日頃はどもりのために話し下手であるが、酒を五斗も飲むと意気が上がり、とうとうたる雄弁で声高に話し、あたりの人を驚かすのである。
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