さん がつ みつ かさ ね て きゅうあそ
郭 麟孫
元 (1279 頃在世)

 

さい として湿うるお さず
山前さんぜんさん 乱鶯らんおう
はしよぎ ればしゅん しょく とうじゅ
みずのぞ めばじん 白板はくはん
酒?しゅれん いをむか
ふねへだ つるのしょう ひとかえ るをおく
清遊せいゆう くるをおそこん ちょうたの しみ
こうべめぐ らせばしょうもん また せつ
細雨霏霏不湿衣

山前山後亂鶯飛

過橋春色緋桃樹

臨水人家白板扉

此地酒?邀我醉

隔船簫鼓送人歸

清遊恐盡今朝樂

囘首?門又夕暉

小雨が降ってはいても、衣服を濡らすほどではない。山のあちらこちらにも、鶯が飛び交っている。
端を通り過ぎれば、まさにたけなわの春景色。桃の花が紅く咲き乱れ、川岸に立てば人家には白い板戸が美しい。
こちら側では居酒屋の旗が、われわれの気をさそっているかと思えば、むこうの船では、笛、つづみとともに、帰ってゆく客を送る様子である。
この今朝の優雅な楽しみが尽きないようにと願ったが、気がついてふり返ってみると、もう城門に夕日のさす暮れ方となっていた。