とう ろう
杜 甫
盛唐 (712 〜 770)

花近高樓傷客心

萬方多難此登臨

錦江春色來天地

玉壘浮雲變古今

北極朝廷終不改

西山寇盗莫相侵

可憐後主還祠廟

日暮聊爲梁甫吟
はな高楼こうろうちこ うして客心かくしんいた ましむ
万方ばんぽう なん ここ登臨とうりん
錦江きんこうしゅん しょく てん きた
ぎょく るい うん こんへん
ほっ きょくちょう てい ついあらた まらず
西山せいざん寇盗こうとう あい おかなか
あわれこう しゅ びょうまつ らる
にち いささりょう ぎん

高楼に近く咲く花は、この私の心を痛ませる。
各地に戦乱の激しい今、私はこの楼に登ったのである。
錦江一帯の春景色は天地に漲り、玉壘山に浮ぶ雲は、その形を変えてやまない。
しかし、朝廷は北極星のように不動である。
西方の侵略者よ、わが国を侵すことなかれ。
亡国の後主も廟にまつられているが、これは賢臣諸葛孔明の力であり、これが中国の伝統でもある。
夕暮れに私はこの孔明をしのび梁甫吟の歌を口ずさんだのであった。