こう ほう あらた山居さんきょぼく草堂そうどう はじ めてたまたま 東壁とうへきだい
白 居 易
中唐 (772 〜 846)

日高睡足猶慵起

小閣重衾不怕寒

遺愛寺鐘欹枕聽

香爐峯雪發簾看

匡廬便是逃名地

司馬仍爲送老官

心泰身寧是歸處

故郷何獨在長安
たかねむ りてなお くるにものう

しょう かくきんかさ ねてかんおそ れず

あい かねまくらそばだ てて

こう ほうゆきすだれかか げて

きょう
便すなわこれのが るるの

なお ろうおく るのかん

こころ やす やす きはこれ するところ

きょう なんひとちょう あん のみに らんや

日も高くのぼり睡りも十分なのだが、起きるのがおっくうである。
小さな建物だけれども、夜具を重ねているので寒さの心配もない。
遺愛寺の鐘は寝ている床まで聞こえ、香が峰の雪は簾を上げれば見ることができる。
ここ廬山は、名利から逃れるのによい土地であり、司馬という役目も、老後にはこの上ない職である。
身も心も安らかなことこそ、人間が最後に落ち着くところである。
最後の地というのはなにも長安にだけあるのではないのだ。