摂津の冑山は、さきには郷里へゆく自分を送り、今はまた逆に京都に帰る自分を迎えてくれる。 指折り数えると、この山陽道は十回も行き来していることになる。 この間、山や川の様子は昔と少しも変わらないが、いつしか自分の髪は白いものが多くなってしまっている。 故郷の広島には、さらに年老いた母がおられるから、明年もこの山陽道を下って、母をお見舞い申し上げねばならぬ。