冑 山 の 歌
頼 山陽
安永九 (1780)〜天保三 (1832)
冑山昨送我

冑山今迎我

黙數山陽十往返

山翠依然我白鬚

故ク在親更衰老

明年又應下此道
冑山ちゅうざん きのう われおく
冑山ちゅうざんきょう われむこ
もく してかぞ うれば山陽さんよう たび往返おうへん
山翠さんすい ぜん たれどもわれ白鬚はくしゅ
きょうおや さら衰老すいろう
明年みょうねん また まさみちくだ るべし

摂津の冑山は、さきには郷里へゆく自分を送り、今はまた逆に京都に帰る自分を迎えてくれる。
指折り数えると、この山陽道は十回も行き来していることになる。
この間、山や川の様子は昔と少しも変わらないが、いつしか自分の髪は白いものが多くなってしまっている。
故郷の広島には、さらに年老いた母がおられるから、明年もこの山陽道を下って、母をお見舞い申し上げねばならぬ。