さん
柴野 栗山
元文元 (1736) 〜 文化四 (1807)

誰將東海水

濯出玉芙蓉

蟠地三州盡

插天八葉重

雲霞蒸大麓

日月避中峯

獨立原無競

自爲衆嶽宗
たれ東海とうかいみず って あらいだぎょく よう
わだかま ってさん しゅう き てんさしはさ んで八葉はちよう かさ なる
うん 大麓たいろく し 日月じつげつ 中峯ちゅうほう
独立どくりつ もと きそ く おのずか衆岳しゅうがくそう

一体誰が東海の水で洗い上げたのであろう、この美しい芙蓉の姿の富士の山を。
裾野は広く甲斐・相模・駿河の三州にわたり、その頂上は天空にさしはさんで、八枚の花弁の花のような気高い姿を見せている。
雲や霞は広々とした麓からたちのぼり、日や月は中央の峠をさけて通ってゆく。
大空に一きわ聳え立ち、地に競うものがなく、おのずと群山の宗主となっている。