海城(かいじょう) の寒柝(かんたく) 月(つき) 潮(うしお) に生(しょう) じ 波(は) 際(さい) の連檣(れんしょう) 影(かげ) 動揺(どうよう) す 此(こ) れより五(ご) 千(せん) 三(さん) 百(びゃく) 里(り) 北辰(ほくしん) 直(ちょっ) 下(か) に銅標(どうひょう) を建(た) てん
北の城下町、松前の寒中の夜深く拍子木の音が冴えて、月は潮と共に海面に浮ぶ。 帆柱を連ねて波際に碇泊する多くの船は、海面に影を落として揺れている。 ここ松前から北へ五千三百里、北極星の真下に銅標を打ち建てて、我が国の領土であることを宣言して、祖国を夷狄の手から守らなければならぬ。