まつ まえ じょう さく
長尾 秋水
安永八 (1779) 〜 文久三 (1863)

海城寒柝月生潮

波際連檣影動揺

從此五千三百里

北辰直下建銅標

海城かいじょう寒柝かんたく つき うしおしょう
さい連檣れんしょう かげ 動揺どうよう
れより せん さん びゃく
北辰ほくしん ちょっ 銅標どうひょう てん


北の城下町、松前の寒中の夜深く拍子木の音が冴えて、月は潮と共に海面に浮ぶ。
帆柱を連ねて波際に碇泊する多くの船は、海面に影を落として揺れている。
ここ松前から北へ五千三百里、北極星の真下に銅標を打ち建てて、我が国の領土であることを宣言して、祖国を夷狄の手から守らなければならぬ。