たい へい よう
安達 漢城
元治元 (1864) 〜 昭和二十三 (1948)

日昇於浪又沈波

海水洋洋紫色多

鵬影不飛鯤不躍

碧空萬里白雲過
なみ よりのぼ りて又波またなみしず
海水かいすい 洋々ようよう として しょく おお
鵬影ほうえい ばず鯤躍こんおど らず
碧空へきくう ばん 白雲はくうん

太平洋を航海していると陸も島も見えず、見渡すかぎり海である。
朝、太陽は波の間から上がり、夕方また波の間に沈んでいく。
広々とした海の水は美しい紫色をしている。
大鳥の飛ぶ影もなく、大魚の躍ることもなく、平穏な航海である。
ふと見上げた青空には、ひとひらの雲が浮んでゆっくりと静かに流れてゆく。