おう はっ けい
大江敬香
安政四? (1857) 〜 大正五 (1916)

堅田落雁比良雪

湖上風光此處收

煙罩歸帆矢走渡

風吹嵐翠粟津洲

夜寒唐崎松間雨

月冷石山堂外秋

三井晩鐘勢多夕

征人容易惹郷愁
かた 落雁らくがん ゆき
じょう風光ふうこう ところ/rt>おさ/rt> まる
けむり はん ばせわたし
かぜ嵐翠らんすいあわ の洲
さむ唐崎からさき しょう かんあめ
つきひやや かなり石山いしやま 堂外どうがいあき
ばん しょう ゆうべ
征人せいじん よう 郷愁きょうしゅう かん

堅田におりる雁の群れ、比良山の雪の夕景色、素晴らしい琵琶湖の風景は既にここに尽くされているが、さらに夕もやの中を矢走りに帰る帆かけ舟、初夏の風に緑したたる山々を望む粟津の浜、或いは唐崎の松を降りこめる夜の雨、月光冴える石山寺の秋の景色、そしてまた三井寺の夕べの鐘の音、夕映えの瀬田の橋と、ここを訪れる旅人は、たちまち望郷の思いにかられるのである。