海 南 行かいなんこう
細川 頼之
元徳元 (1329)〜明徳九(1392)

人生五十愧無功

花木春過夏己中

滿室蒼蠅掃難去

起尋禪榻臥清風
人生じんせいじゅうこうきを
ぼくはるぎて夏己なつすでなかばなり
満室まんしつ蒼蠅掃そうようはらえどもがた
って禪榻ぜんとうたずねて清風せいふうせん

すでに人生を五十年も過ごしたのに一向に功績がないのは実に恥ずかしい。
今は花咲く春も過ぎ去って夏の半ばである。
あをばえが部屋の中をうるさく飛びまわっているように小人共の動きがうるさい。
こんな所にいつまでもいないでいっそ禅堂を訪れ或いはまた、涼しい風に吹かれながら木陰に臥したいものだ。さぞせいせいすることであろう。