夜 百尺もあろうという海浜の高いこの楼にのぼってみると、見わたすかぎり大海原でどのあたりが話に聞くアメリ カ大陸になるのだろうか、見当もつかない。 じっと見ているとその海のかなたに行ってみたいという思いが、心の 底からわき上がってくる。 折しも秋の月は冴え、はてしなく広がるこの東海の波涛を白く照らしているのみである。