馬に当てる鞭の音もひそやかに、上杉勢は夜陰に乗じてひそかに河をわたった。 夜明け方、河霧の晴れ間から 上杉の大軍が、大将旗を押し立てて、武田勢の前に陣取っているのが見える。 謙信にとって返す返すも残念なことは、長い年月の鍛錬で磨いた腕前もかいなく、流れ星のきらめく一瞬の差で 、強敵信玄を逃してしまってことだ。