識庵しきあん ざん つのだい
頼 山陽
安永九 (1780)〜天保三 (1832)

鞭声肅肅夜過河

暁見千兵擁大牙

遺恨十年磨一劔

流星光底逸長蛇
鞭声べんせい しゅく しゅく 夜河よるかわわた
あかつき千兵せんぺいたい よう するを
こん なりじゅう ねん 一剣いつけんみが
りゅう せい 光底こうてい ちょう いつ

馬に当てる鞭の音もひそやかに、上杉勢は夜陰に乗じてひそかに河をわたった。
夜明け方、河霧の晴れ間から 上杉の大軍が、大将旗を押し立てて、武田勢の前に陣取っているのが見える。
謙信にとって返す返すも残念なことは、長い年月の鍛錬で磨いた腕前もかいなく、流れ星のきらめく一瞬の差で 、強敵信玄を逃してしまってことだ。