遠くに見えるのは雲か山か、はては呉か越か。 大空と大海原が成るかに遠く相接して一筋の青い髪のように見 える。 この渺々とはてしない天草の洋に舟泊りすると、もやは、船窓をつつんで棚引き、日は次第に沈んでゆく。 雄大なこの夕景色を眺めていると、大きな魚が波間に踊るのが一瞬見えたが、その後には太白星が月のように 明るく輝いて船を照らしていた。