天 草 洋あまくさなだはく
頼 山陽
安永九(1780)〜天保三(1832)

雲耶山耶呉耶越

水天髣髴青一髣

萬里泊舟天草洋

煙横篷窗日漸没

瞥見大魚波闥オ

太白當舟明似月
くもやまえつ
水天髣髴青一髣すいてんほうふつせいいつぱつ
ばん ふねはく天草あまくさなだ
けむり篷窗ほうそうよこ たわりて ようやぼつ
瞥見べつけん大魚たいぎょ かんおど るを
太白舟たいはくふねあた って明月めいつき たり

遠くに見えるのは雲か山か、はては呉か越か。
大空と大海原が成るかに遠く相接して一筋の青い髪のように見 える。
この渺々とはてしない天草の洋に舟泊りすると、もやは、船窓をつつんで棚引き、日は次第に沈んでゆく。
雄大なこの夕景色を眺めていると、大きな魚が波間に踊るのが一瞬見えたが、その後には太白星が月のように 明るく輝いて船を照らしていた。