がつ十三じゅうさん
上杉 謙信
享禄三(1530)〜天正六(1578)

霜滿軍営秋気清

數行過雁月三更

越山併得能州景

遮莫家郷遠征憶
しも軍営ぐんえいちてしゅうきよ
数行すうこう雁月三更がんつきさんこう
越山併えつざんあわたり能州のうしゅうけい
遮莫さもあらばあれきょう遠征えんせいおも

霜は真白く陣屋に満ちて秋の気はあくまで澄んでこの身にしみる。
空には幾列かの雁が鳴き渡り、真夜中の月は皎々と冴えわたっている。
その月明かりのもとに越後、越中の山々、更に今わが手に収めた能登の景色が見渡せる。
ままよ故郷の者達は、吾等遠征の身を案じているだろうが、それを忘れて、心ゆくまでこの絶景をさかなに歓をつくそうではないか。