〜 〜 『 源 氏 物 語 』 〜 〜
 
2008/02/26 (火) 源 氏 物 語 と は (一)

「源氏物語」 は、日本が世界に誇る文化遺産として、筆頭に上げてもいい傑作長編の大恋愛小説である。
現代に生きている私たちは、傑作長編小説といえば、トルストイの 「アンナ・カレーニナ」 、ドストエフスキーの 「罪と罰」 、フローベルの 「ボヴァリー夫人」 、スタンダールの 「赤と黒」 、ブルーストの 「失われた時を求めて」 等々が、すぐ頭に浮ぶ。ところがそて等の西洋のどの小説よりも早く、八世紀も昔の東洋の日本に、 「源氏物語」 は誕生していたのである。
今から千年も昔、わが国の王朝華やかなりし平安時代に、紫式部という子持ちの一寡婦の手によって、その偉業が果たされていた。
小説が傑作と評価されるには様々な条件が求められる。内容の面白さ、文章のよさ、登場人物の魅力、読後に余韻を引く深い感銘度等々であろう。 「源氏物語」 は、それ等の条件のすべてを具えていた。

内容は光源氏と呼ばれる稀有な美貌の持ち主で、文武両道あらゆる才能に恵まれ、妖しいほど魅力的な上、人並み以上に多感好色な一人の皇子を主人公としている。
彼の生涯に愛した個性的で魅力に富んだ女たちを、その周りに配し、めまぐるしく起こる恋愛事件の様相や、恋人達の運命の喜憂のすべてを、詳細なディテールと行き届いた綿密な心理描写と共に、余すところなく描ききったものである。
巻頭には、光源氏の誕生前の父帝と生母の恋が据えられ、光源氏の死後は、その孫の世代の恋愛事件にまで筆が及んでいる。従って光源氏を中心とした四代にわたる恋愛長編小説ということになる。
一帖ごとに帖名をたてた全五十四帖は、 「桐壺」 の帖から 「夢浮橋」 まで現代の四百字詰原稿用紙では、大方四千枚に達する量である。登場人物の数も四百三十人に及んでいる。

新調日本古典集成 『源氏物語 (一) 』 校注者・石田 穣二 清水 好子 発行所・ 新潮社
『源氏物語 巻一』 著者 ・瀬戸内 寂聴 発行所・ 講談社 ヨ リ