濁りにしめるほどよりも、なまうかびにては、かへりあしき道にもただよひぬべくぞおぼゆる。
絶えぬ宿世あさかで、尼にもなさで尋ね取りたらむも、やがてあひ添ひて、とあらむをりも、かからむきざみをも、見過ぐしたらむ仲こそ、契り深くあはれならめ、われも人も、うしろめたく心おかれじやは。
また、なにめにうつろふかたあらむ人を恨みて、けしきばみそむかふはた、おこがましかりなむ。
心はうつろふかたありとも、見そめし心ざしいとほしく思はば、さるかたのよすがに思ひてもありぬべきに、さやうならむたぢろきに、絶えぬべきわざなり。
すべてよろずのことなだらかに、怨 (エン) ずべきことをば、見知れるさまにほのめかし、恨むべからむふしをも、にくからずかすめなさば、それにつけて、あはれもまさりぬべし。
多くは、わが心も、見る人からをさまりもすべし。
あまりけむげにうちゆるべ見放ちたるも、心やすくらうたきやうなれど、おのづから軽きかたにぞおのへはべるかし。
つながぬ舟の浮きたるためしも、げにあやなし。さははべからぬか」
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