さまざまな人之のうへどもを語りあはせつつ、
「おほかたの世につけて見るにはとがなきも、わがものとうち頼むべき選 (エ)
らむに、多かるなかにも、えなむ思ひ定むまじかりける。
男 (オノコ) の朝廷
(オオヤケ) につかうまつり、はかばかしき世のかためとなるべきも、まことのうつはものとなるべきを取りいださむには、かたかるべしかし。
されど、かしこしとても、一人二人世の中をまつりごちしるべきならねば、上は下に助けられ、下は上になびきて、こと広きにゆづろふなむ。
狭き家のうちの主人とすべき人一人を思ひめぐらすに、足らではあしかるべき大事どもなむ、かたがた多かる。
とあればかかり、あふさきるさにて、なのめにさてもありぬべき人の少なきを、すきずきしき心のすざびにて、人のありさまをあまた見あはせむのこのみならねど、ひとへに思ひ定むべきよるべろすばかりに、同じくは、わが力いりをし、なほしひきつくろふべき所なく、心にかなふやうにもやと、選
(エ) りそめつる人の、定まりがたきなるべし。
かならずしもわが思ふにかなはねど、見そめつる契りばかりを捨てがたく思ひとまる人は、ものまめやかなりと見え、さてたもたるる女のためも、心にくくおしはからるるなり。
されど、何か、世のありさまも見たまへ集むるままに、心に及ばず、いとゆかしきこともなしや。君達
(キムタチ) の上なき御選びには、ましていかばかりの人かはたぐひたまはむ。
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