第二十一回 関西クラウン吟詠家
ジ ョ イ ン ト リ サ イ タ ル
平成十九年八月二十六日 (日) 於:尼崎アルカイックホール 
主催:日本クラウウン関西吟友会
後援:日本クラウン株式会社




1939年イギリスとフランスはヒットラーによる独裁政治体制が敷かれたドイツに、戦線を布告し、ここに第二次世界大戦が始まった。

近衛文麿、松岡洋右外相は。

近衛  「松岡さん、ヨーロッパの情勢は、さらに厳しくなってきましたな」
松岡 「そのとおりです」
近衛 「ヨーロッパはドイツ、イタリアを枢軸とする新しい秩序が生まれるのは必至です。我が国は予想外に長引いた中国との戦争を早く終らせ日本を柱とした新秩序を形成することが重要です」
松岡 「蒋介石が抵抗できるのは英米の援助物資のためでしょう」
近衛 「なるほど。このルートを叩けば今度こそ蒋介石も降参するでしょうぞ」
松岡 「そうです。そして、我が国はドイツ、イタリアと軍事同盟を結べば」
近衛 「アメリカを牽制することにもなる」


1940年、日・独・伊の三国同盟が成立した。
日本はすぐにインドシナに軍を送り中国への援助物資を送るルートを断ち切っていた。
一方、アメリカは日本に対し、くず鉄、石油等の輸出を禁止した。日本の石油の備蓄量はわずか二年、日本は窮地に立たされた。

1941年、近衛内閣は総辞職。東条英機が次の首相となった。

外相  「首相、アメリカから最終通告が出ました。日本は中国、インドシナから撤退、それに三国同盟の破棄をせよと」
東条 「いよいよ、来るべき時が来たか!。日本のとるべき道は唯一つ」

ついに日本に大きな風が吹き荒れ始めた。

布 哇 海 戦
(松口 月城)
吟:田中 水緑・尾崎 水紅・西岡 緑優
日の丸の飛機山を越えて来たる

降下矢の如く互いに魁を競う

見るべし機腹巨弾を抱き

煙筒投入して去って転回

霹靂海を破り朦艟覆る

水柱天に冲して響き雷に似たり

真珠湾上硝煙漲り

日米の大戦此の日に開く
1941年十二月の真珠湾攻撃から二年二ヶ月後には硫黄島をアメリカ軍に占領され、日本の敗戦の色が濃くなってきた。
惜 別 の 歌
(島崎 藤村)
歌:渡辺 緑翔・他16名
  (一)

遠き別れに耐えかねて

この高殿に登るかな

悲しむなかれ我が友よ

旅の衣をととのえよ

  (二)

別れといえば昔より

この人の世の常なるを

流るる水を眺むれば

夢恥ずかしき涙かな
ついにアメリカ軍は沖縄本土に上陸、日本軍と激しい攻防戦を繰り広げ、日本が誇る最強戦艦 「大和」 も撃沈。
風はアメリカに味方し日本は益々窮地に追い込まれていった。
そのような戦渦の中、死を賭けた青春をおくる、二十歳前後の若者で構成された予科練や予備学生の特別攻撃隊員は南海に散り果てていった。その数は六千名にも及んだ。
噫 特 別 攻 撃 隊 出 撃
(松口 月城)
吟:池田 星粋・松葉 水章
出動の写真涙を払って看る

勇奮今国難に赴かんと欲す

撃滅の精神烈火の如し

大なる哉忠胆又義肝

勇士の面上皆笑を含む

噫此の肉弾此の爆弾
同 期 の 桜
(渡辺 吟神)
吟:加藤 芳栄・平田 季芳
満目皚々たり万朶の桜

袤空指さす処鵬影横たわる

さも似たる哉機上の美少年

花と散らば還も開かん同期の桜
1945年四月、ヒトラーが自殺。連合国は日本に対して無条件降伏の要求を取り決めた。
しかし、日本はこの要求を黙殺。ついに、八月六日、広島に、八月九日、長崎に原子爆弾が投下されてしまった。
原 爆 落 つ
(松口 月城)
歌:山岡 桜山・原 瑞鴦・笹本 媛山・平山 賀宝弓
原爆炸裂天地轟く

崎陽満目猛烟生ず

大廈高楼瞬時に砕け

山崩れ海翩り鉄塔傾く

須臾にして焔々大火起こり

焦頭爛躯累累として横たわる

夫は妻を喚び妻は子を覓む

阿鼻叫喚修羅の声

八万の生霊恨みを呑んで死す

噫原爆の大犠牲

文化の悪用人類を滅ぼす

平和の鐘何の時にか鳴らん
朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ収拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク
朕ハ帝國政府ヲシテ米英支蘇四國ニ對シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ
抑々帝國臣民ノ康寧ヲ圖リ萬邦共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ皇祖皇宗ノ遣範ニシテ朕ノ拳々措カサル所曩ニ米英二國ニ宣戦セル所以モ亦實ニ帝國ノ自存ト東亜ノ安定トヲ庶幾スルニ出テ他國ノ主權ヲ排シ領土ヲ侵カス如キハ固ヨリ朕カ志ニアラス然ルニ交戰巳ニ四歳ヲ閲シ朕カ陸海将兵ノ勇戰朕カ百僚有司ノ勵精朕カ一億衆庶ノ奉公各々最善ヲ盡セルニ拘ラス戰局必スシモ好轉セス世界ノ大勢亦我ニ利アラス加之敵ハ新ニ残虐ナル爆彈ヲ使用シテ頻ニ無辜ヲ殺傷シ惨害ノ及フ所眞ニ測ルヘカラサルニ至ル而モ尚交戰ヲ繼續セムカ終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招来スルノミナラス延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ斯ノ如クムハ朕何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ皇祖皇宗ノ神靈ニ謝セムヤ是レ朕カ帝國政府ヲシテ共同宣言ニ應セシムルニ至レル所以ナリ
長 崎 の 鐘
(サトウハチロウ)
歌:山岡 翠山・他十九名
  (一)

こよなく晴れた青空を

悲しと思うせつなさよ

うねりの波の人の世に

はかなく生きる野の花よ

なぐさめはげまし長崎の

ああ長崎の鐘が鳴る

  (二)

召されて妻は天国に

別れてひとり旅立ちぬ

かたみに残るロザリオの

鎖に白きわが涙

なぐさめはげまし長崎の

ああ長崎の鐘が鳴る
〜 〜 N e x t 〜 〜