とき いだ く の
梁川 星巌
寛政元(1789)〜安政五(1858)

雪灑笠檐風捲袂

呱呱覓乳若為情

他年鐵枴峯頭嶮

叱咤三軍是此聲
ゆきりゅうえんそそいでかぜたもと
ちちもとむるかんじょう
ねん鉄枴峯頭てっかいほうとうけん
三軍さんぐんしっするはこえ

雪は笠のひさしに降りそそぎ、風はたもとを吹き上げる。
激しい吹雪の中を、ふところに抱いた幼な児は、声を上 げて泣きながら、母親の乳を求めている。
この難儀に、乳飲み子を抱いた母、常盤の思いはどんなであったろう 。
けれど後年、あの鉄枴山の険しい峰で、あの勇壮な大軍を指揮したのは、実に、かってこの幼な児の成長した 後の声だったのである。