雪は笠のひさしに降りそそぎ、風はたもとを吹き上げる。 激しい吹雪の中を、ふところに抱いた幼な児は、声を上 げて泣きながら、母親の乳を求めている。 この難儀に、乳飲み子を抱いた母、常盤の思いはどんなであったろう 。 けれど後年、あの鉄枴山の険しい峰で、あの勇壮な大軍を指揮したのは、実に、かってこの幼な児の成長した 後の声だったのである。