老 泣 ろうきゅう
梁川 星巖
寛政元(1789)〜安政五(1858)

老泣無聲濕客衣

天涯兄弟信来稀

半肩行季兩鬢雪

満望雲山何處歸
老泣 ろうきゅうこえかく湿 うるお
天涯 てんがい兄弟信来 けいていしんきたることまれなり
半肩はんけんこう 両鬢りょうびんゆき
満望まんぼう雲山何うんざんいず れのところ にかかえ らん

老いたこの身の歎きは、声もなく涙がただ旅の身をつつむ衣をうるおすのである。
遠くに離れた兄弟からのたよりは、手にすることもまれである。
荷を肩にする左右の鬢髪も雪のように白くなって しまっている。
はるかに見渡せば、雲も山もはてしなくひろがっているが、さてこれからいったい、わたしはどこに 身を寄せたらよいのだろうか。