自分がこのように困難辛苦に堪えているのは、経書の精神からである。 戦乱は打ち続き、すでに四年も経過した 。 国家は破れ砕かれてまるで風に柳の花が漂うように、 また一身の浮き沈みのさだめのないありさまはまるで浮 き草を雨が打つような状況である。 皇恐灘のほとりではその名の如く自分も大いに恐れている話をし、零丁洋を 通ってはその名の如く自分のおちぶれたことを歎くのでる。 けれど人生には昔から誰も死のない者はない。 死は 惜しむに足りないものだ。 ただ真心を世に留めて後々まで歴史を照らしたいと思うのである。