きょう使つかい
岑 參
盛唐 (715〜770)

故園東望路漫漫

雙袖龍鍾涙不乾

馬上相逢無紙筆

憑君傳語報平安
えん ひがしのぞ めばみち 漫漫まんまん
そう しょう 龍鍾りょうしょう としてなみだ かわ かず
じょうあい うて ひつ
きみ ってでん して平安へいあんほう ぜん

西征の途中、東の故郷の方角を振りかえってみると、路ははるかにはてしなく続いている。
悲しく涙がとめどなく 流れて、両方の袖をびっしょりとぬらせてしまう。折しも都へ行かれる君に出逢ったが、馬上のこととて紙と筆の用 意もなく、手紙の認めようもない。
ただ君に伝言を頼むのみである。どうか郷里の家族に、自分の平安無事を報 せて欲しい。