西征の途中、東の故郷の方角を振りかえってみると、路ははるかにはてしなく続いている。 悲しく涙がとめどなく 流れて、両方の袖をびっしょりとぬらせてしまう。折しも都へ行かれる君に出逢ったが、馬上のこととて紙と筆の用 意もなく、手紙の認めようもない。 ただ君に伝言を頼むのみである。どうか郷里の家族に、自分の平安無事を報 せて欲しい。