原（げん） 爆（ばく） 行（こう）
土屋 竹雨
1887 〜 1958
昭和二十年八月六日、
米軍原爆を広島に投じ、序で九日、更に長崎に投ず
怪光一綫下蒼旻

忽然地震天日昏

一刹那間陵谷変

城市台？帰灰塵

此日死者三十万

生者被創悲且呻

死生茫茫不可識

妻求其夫児覓親

阿鼻叫換動天地

陌頭血流屍横陳

殉難殞命非戦士

被害総是無辜民

広陵惨禍未曽有

胡軍更襲崎陽津

二都荒涼鶏犬尽

壊牆墜瓦不見人

如是残虐天所怒

驕暴更過狼虎秦

君不聞啾啾鬼哭夜達旦

残郭雨暗飛青燐
怪光（かいこう） 一綫（いつせん） 蒼旻（そうびん） より下る
忽然（こつぜん） 地（ち） 震（ふる） い天日（てんじつ） 昏（くら） し
一（いつ） 刹（せつ） 那（な） の間（かん） 陵谷（りょうこく） 変（へん） じ
城（じょう） 市（し） 台？（だいしゃ） 灰塵（かいじん） に帰（き） す
此（この） 日（ひ） 死（し） する者（もの） 三（さん） 十（じゅう） 万（まん）
生者（せいじゃ） は創（きず） を被（こうむ） り悲（かな） しみ且（かつ） つ呻（うめ） く
死（し） 生（せい） 茫々（ぼうぼう） 識（し） るべからず
妻（つま） は其（そ） の夫（おっと） を求（もと） め児（こ） は親（おや） を覓（もと） む
阿（あ） 鼻（び） 叫喚（きょうかん） 天（てん） 地（ち） を動（うご） かし
陌頭（はくとう） 血（ち） 流（なが） れて屍（しかばね） 横陳（おうちん） す
殉難（じゅんなん） 命（いのち） を殉（おと） すは非（ひ） 戦（せん） の士（し）
害（がい） を被（こうむ） るは総（すべ） て是（こ） れ無（む） 辜（こ） の民（たみ）
広陵（こうりょう） の惨（さん） 禍（か） 未（いま） だ曽（かつ） って有（あ） らず
胡（こ） 軍（ぐん） 更（さら） に襲（おそ） う崎（き） 陽（よう） の津（しん）
二（に） 都（と） 荒涼（こうりょう） 鶏犬（けいけん） 尽（つ） き
壊牆（かいしょう） 墜（つい） 瓦（が） 人（ひと） を見（み） ず
是（かく） の如（ごと） きの残虐（ざんぎゃく） 天（てん） の怒（いか） る所（ところ）
驕暴（きょうぼう） 更（さら） に過（す） ぐ狼（ろう） 虎（こ） の秦（しん）
君（きみ） 聞（き） かずや啾々（しゅうしゅう） 鬼（き） 哭（こく） し夜（よる） 旦（あした） に達（たつ） し
残郭（ざんかく） 雨（あめ） 暗（くら） くして青燐（せいりん） 飛（と） ぶを