○六十==日本芸術院会員に選ばれた昭和二十四年以後、すなわち六十二、三の頃をさす。
○年華==年月。
○指一弾==指を一度はじくあいだの時間。きわめて時間の短い事をいう。
○顔朱==顔の朱色をおびたもの。紅顔の美少年をいおう。竹雨の若き頃をいった。
○鎖尽==おとろえつきる。消えおとろえる。
○鬢凋残==鬢の毛も抜けてわずかに残っている。
○文黌==黌はまなびや。すなわち大東文化学院をさす。
○久宰==文黌を久しく主宰して。昭和六年大東文化学院に奉職して以来六十に至るまであおいう。
○無微績==わずかな業績しかない。
○芸府新除==二十四年に日本芸術学院会員に列せられたことをいう。
○是散官== <是> は意味を強調する助字。 <散官> は行政官ではなく、名だけの官職。芸術院会員という職は名誉職に過ぎぬに意。
○鴻雁==大きな雁ろ雁。秋には北の国からやって来る。竹雨の故郷は山形県であり、鴻雁にかこつけて故郷の地を言おうとした。
○長天==広い空。雁が大空を渡って、竹雨がいる東京の地に来るからいう。
○秋信遠==鴻雁といったので鴻雁とした。秋に雁が持って来る便り。故郷からの便りをいう。
○桑楡==くわとにれの木。転じて夕陽の影が木を照らすことから日暮れをいう。老年のたとえにも使われる。ここでは夕暮れをいう。
○故国==竹雨の故郷鶴岡市をいう。
○余生==残りの命。
○那願==何を願おう、何も願わぬという意味の反語。
○軒裳貴==住まいと衣服の立派な事。富貴な身分をいう。
○滄江==広く深い川。鶴岡周辺の川だと赤川か青竜寺川であるが、離れているが、最上川を指すのかもしれない。
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