すい ぜん じょう しゅ えん
落合 素堂
1892 〜 1971

しゅう げつ しゅん りょ こんなぐさ

せい ちょう ゆう すい おのずかせん かん

ゆう じん つえ へんみち

しょう ようじょう しゅ えん
秋月春花慰旅魂

清澄涌水自潺湲

遊人曳杖池邊徑

四季逍遥成趣園

(通 釈)
秋には月が、春には桜が旅情を慰めてくれる。この庭園の澄んだ湧き水は、清らかな音をたてて自然に流れている。遊びに来る人は池のほとりの小道に杖をついて、四季折々の趣のあるこの成趣園を散歩するのである。

○秋月==秋の明月。    ○春花==春の桜。
○旅魂==旅思、旅情。旅にあるときの心持。
○清澄==濁りがないこと。   ○涌水==涌き出る水。
○潺湲==水の流れる音やさま。
○遊人==遊び楽しむ人。 ○曳杖==杖をつく。
○径==小道。 ○逍遥==ぶらつく。
○成趣園==水前寺公園のもともとの名。


(解 説)
熊本市内東部にある名園水前寺を詠じたもの。
熊本藩主細川忠利が別荘として運営した成趣園内に、水前寺を建ててその庭とし、造園した部分が今日残る水前寺公園である。
山水木石を配して東海道五十三次を模して有名である。中でも、涌水の流れと芝山とがすぐれている。

(鑑 賞)
春夏秋冬、季節を問わず旅情を慰めてくれる水前寺公園の赴深いたたずまいが気に入ったのであろうか、いかにも清閑な気分が伝わってくる。