まつ しま
釈 南山
1756 〜 1839


てん さん すい

おのおの いつ ぽうほしいまま にす

しゅう しょう しゅう

てん さん すい
天下有山水

各擅一方美

衆美歸松州

天下無山水

(通 釈)
天下いたるところに山水の名所があり、それぞれの地方で評判が高い。
ところが、この松島は、それらの美景がすべて残らず集まっているので、この松島に比較すれば、ほかの名勝といわれるところは影が薄くなってしまう。
松島のほかには天下に山水無しといっても過言ではない。

○山水==山と水の景色。   ○擅==ひとりじめにする。
○一方美==一地方の名声、美名。
○衆美==諸々の美しいもの。
○松州==松島。「州」 は島の意。


(解 説)
松島の景勝が、天下一であることを詠った詩。
松島は、宮城県の中部、仙台湾の支湾松島湾の湾岸と湾何260余の島々からなる景勝地。島と松と静海の美は日本三景の随一といわれ、大高森の壮観、富山の麗観、扇谷山の有幽観、多聞山の偉観を松島四大奇観とする。
塩竈神社、瑞巌寺、五大堂などの史跡も多い。
(鑑 賞)
松島の景勝を手放しで賛美した詩である。天下の山水の美は全て集まっていると詠う転句など、いささか度の過ぎた表現と思われるが、これも作者の松島への思い入れと思えば了承できなくはない。
作者は、仙台藩主伊達重村に重用され、後に仙台瑞鳳寺の住職となっているので、松島の美しさに日常接し、自然、賛美にも力が入ったというところだろう。
技巧的には、起句で 「天下山水あ有り」 といい、これを受けて、結句で 「天下山水無し」 と受けている。この対応の妙には味わい深いものがある。