(通 釈) 東北や北越では、今にも戦いが会が始まりそうな雲行きである。しかし、私は決して口出しをせずに傍観者に徹して、好きなだけ酒を呑んで日々を暮らそう。 顧みれば、この動乱の世に十年も飽きずに世事に奔走したものだ。だからこそいまは、故郷に帰って俗塵を洗い流し、雨の音でも聴きながら心閑かに暮らしているのだ。
○東海波濤==東方戦争勃発の間近いことをいう。 ○北越雪==北越の地に戦端が開かれようとしていることを寓意的に、こういっている。 ○看光景==天下の形勢を傍観すること。 ○? (コウ) ==角製のさかずき。杯と同義。 ○風塵客==世俗のことに煩わされる人物。官途について動乱の中に生きてきた自分を指す。 ○帰臥==故郷に帰って退休すること。 ○故山==故郷。