(通 釈)
あなたにお勧めします。どうぞ金糸で織った衣服など愛惜なさらないで。
どうぞわたくしの若く美しい時を惜しんでくださいませ。
人生の花開き、手折りごろになったら、すぐに手折ってくださいませ。人生の花時を逸してから、むだに枝を折ろうなどとなさいますな。
○金縷衣==黄金の糸で織った高価な衣服。
○少年時==年の若いとき。 「少年」 は男にも女にも用い、年齢の範囲も今使っている意味よりもひろい。
○花開堪折云々==花が咲いて折り取れるようになったら、すぐに折り取れ。
○莫待無花空折枝==盛りを過ぎてからではだめですよ、の意。
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(解 説)
この詩は 『楽府詩集』 によると楽府の近代曲辞に分類される。この詩の作者については、 『楽府詩集』 では李リの作とし、 『全唐詩』
は無名氏とし、 『唐詩三百首』 は杜秋娘 (ト シュウ ジョウ)の作とする。詩意から見て杜秋娘の作とするのがふさわしいようである。
(鑑 賞)
この詩を、若いときに努力しておかないと、年老いてから悲しまねばならぬ、という、朱熹の 「偶成」 のような勧学の詩と取る人がいるが、そうではない。
若い盛りの時に愛してちょうだい、という愛の歌なのである。いかにも妓女の作りそうななまめかしい詩なのである。 勉強しろ、とは反対に、若い時にこそ悔いなく遊べ、楽しめ、というのである。
前半は対偶表現を用い、全体に素朴な詠いぶりのうちに、民歌風の艶冶な味を出している。中にはおのずから、盛りを過ぎた女性の悲傷が蔵されており、なかなか味わい深いものがある。六朝の
「子夜歌」 などの風を受け継いで深味を添えた佳作といえよう。 |